生殖器一般的構造

どのような生物でも生殖はおこなわれるので、生殖のためのしくみが存在するが、体細胞がそのままその役割を果たす場合、特に呼び変えることは少ない。多細胞生物では、特定の部位が生殖のために分化する場合、これを生殖器、あるいは生殖器官と呼ぶ。特に有性生殖にかかわる部分をこう呼ぶ場合が多い。動物の場合、生殖細胞を形成する部分を生殖巣(せいしょくそう)という言い方をする場合もある。また、ほ乳類の場合、生殖巣は内分泌腺の能力も持っているので、生殖腺ともいう。生殖細胞を形成する部分の周囲に、その役割を助ける構造が発達する場合、これも生殖器に含める。

形成される配偶子の大きさに差がある場合、大きい方を形成する構造を雌性生殖器(しせいせいしょくき)、小さい方を形成する方を雄性生殖器(ゆうせいせいしょくき)と呼ぶ。動物のように卵と精子を形成する場合には、卵を形成する側が雌性、精子を形成する側が雄性である。これは個体の雌雄とは無関係である。

生殖器は、有性生殖を可能にするための器官であるから、種内ではその形質は安定している。他方、生殖に関するしくみは、一般には通常の生活には利用しない部分であるから、その生物の生活活動における自然選択を受けにくいと考えられる。そのため、その構造は基本的には変化しにくい。高等植物において、花の構造や雌しべの内部構造などが重要な分類上の特徴とされるのは、ここに理由がある。その意味では、リンネが雄しべの数などを用いて分類したのも、見当はずれではない。

それと同時に、種ごとの特異性を示しやすい。特に、昆虫など外骨格の発達した動物では、その部分がキチン質でできており、しかも雌雄の生殖器がうまくかみ合う形になっている。種が異なると細部の構造が異なるので、交尾が成立しないようになっており、種間交雑を妨げる物理的な障壁として働く。各分類群の分類において、種の区別にこの部分を利用する例は多い。

このような部分は、環境との関連が薄く、つまり適応的には無意味である上、鍵と鍵穴のごとく、互いにかみ合わなければ機能として成立せず、しかも生殖に直接にかかわる。それだけに、種分化と大きくかかわることになるのだとも言われる。